台湾の電動スクーターGogoroはゲームチェンジャー

Gogoroという会社

Gogoroという電動スクーターをご存知でしょうか。
台湾に(特に北部の都市部に)出張または旅行でいらっしゃる方は街に可愛い形をした電動スクーターが結構に走っていることに気付いたはずです。

GogoroHTCの元Chief Innovation OfficerHorace LukeMatt Taylorによって2011年に創業された電動スクーターの台湾企業。2015年に最初のモデルが紹介されました。

独特の外観と政府の購買補助、特に若者層の環境に対する意識の高まりから人気が出て、台北では比較的頻繁に見るようになりました。

そのGogoroが先月新しいモデルを発表しました。その名もGogoro2。お値段もぐっとお得になり、いよいよ台湾での電動スクーターの普及期に拍車がかかると思われます。

                                 Gogoro2の発表会の様子



今回はGogoroの何が素晴らしいか、MBA的視点から見てみようと思います。

デザイン

お気づきのようにGogoroのデザインはシンプルでとてもお洒落なデザインとなっております。バイクというよりは、iPhoneMacなどに近く、飽きないデザインで若者や女性を念頭に置きつつも、あらゆる層に受け入れられるデザインとなっております。色を選んだりアクセサリーをつけることで、まるでスマホのように自分のスクーターを個性化出来るようにしたのも特徴です。

それもそのはず、Gogoroの創業者はスマートフォン大手のHTCの元チーフイノベーションオフィサーHorace Luke。競争の激しいスマホ業界で消費者向けの好みを知り尽くしている人たちによって作られたバイクなのです。

発表会の様子を見ても、これがスクーターの発表会だとは誰も思わないでしょう。まるでAppleの発表会を見ているようで、詳細にプランされたスピーチはスティーブ・ジョブズのプレゼンを思わせます。ときに英語でときに中国語で話すクールなプレゼンにマニアを熱狂するのです。

Gogoroのデザイン、それはスクーターを超えてオーナーのライフスタイルを表現するものなのです。

政府の補助

電動スクーターは先行投資の必要性や製品の原価から考えるとなかなか利益を出すことは簡単ではありません。

そこでGogoroが頼ったのは政府の補助。
Gogoro2の入門編の価格は73,800元(約26万円)。台湾でよく乗られている125ccのスクーターの入門編が50,00060,000元であることを考えると、まだまだコストパフォーマンスに疑問が残ります。

しかし、これは見せかけの価格。Gogoro購入者は中央政府、地方政府から購入補助がもらえ、なんと一番補助金が大きい桃園の住民票を持っている消費者は44,800元(約16万円)で購入でき、さらに中古のガソリンバイクを廃棄するとなんと38,800元(約14万円)という驚きの価格で電動スクーターが買えるのです。

Gogoroはいよいよガソリン車よりも安い価格で買えるようになりました。この1年で急激に台湾で普及することは間違いなさそうです

ビジネスモデル

Gogoroの一番の特徴はビジネスモデルイノベーションだと私は思っています。

  • 垂直統合
今までバイクに関する産業は得意分野に特化した業者によって運営されていました。製品を開発してマーケティングするメーカー、お客様へ販売する販売店、メンテナンスをする街の修理屋、ガソリンを提供するガソリンスタンドなど、役割によって別々の業者によって運営され、それらがエコシステムとして消費者にサービスしていました。

Gogoroはその常識を覆し、バリューチェーン全てを全てを自社で賄うことにしました。製品開発、マーケティング、販売、修理、電気バッテリーのスワップ、それらを垂直統合で提供することで顧客へのライフタイムに渡るサービスの提供、顧客行動の理解が可能になったのです。

                                   Gogoroのバッテリースワップ


  • サブスクリプション
新規事業のパターンで私が一番重要だと思うのが、他の産業からアイデアを学ぶというテクニックです。例えばSaaSビジネスは、課金スタイルを新聞、雑誌などの定期購読にヒントを得て、サブスクリプションスタイルでサービスを提供することでビジネスとして大きく伸びました。

Gogoroが採用したのもサブスクリプションモデル
Gogoroはスクーターを販売する際に、スクーターの代金を消費者から受け取ります。しかしGogoroのビジネスの凄さは本当はオーナーになってからの売上にあります。毎月の走行距離により、299元(約1000円、100キロメートルまで)、499元、799元、1199元(約4300円、1000キロメートルまで)の月額のバッテリー代を受け取ることが出来るのです。

何がすごいかというと、毎月の売上、キャッシュフローがほぼ読めます。また、オーナーが増えれば増えるほど、スクーターが寿命で廃棄されない限り指数度的にサブスクリプション分の売上が上がっていきます。

サブスクリプションを採用したことで毎月の安定売上があがるようになり、それは投資家への説明にも役に立っているのです。

よく考えてみると創業者が元HTC、つまり通信業界を知り尽くしている人間なんですね。毎月の携帯の代金を元手にプロモーションや新サービスを開発をしている通信業界のビジネスモデルを真似たのは自然のことだったのかも知れませんね。

いかがでしたか?

いろいろ理屈を並べて見ましたが、実際はGogoro店舗での体験で私はやられてしまいました。バイクショックというより、Macショップのようにカジュアルで洗練された店舗の作りと店員の対応。さらに試乗し虜になってしまいました。あのスムーズな加速、静かなエンジン、人々からの注目、人々からの注目、人々からの注目  これはたまりません。

「欲しい!」衝動買いしてもおかしくないです。

残念ながら購入したばかりのバイクがあるため、買わないのですが、家族の2台目としては断然第一候補として、今後も注目していきたいと思います。


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